吉沢亮にとっての、「人」と「仕事」と。

シリーズ待望の3作目『キングダム 運命の炎』がついに公開。10代の頃から仕事で多くの重責を担ってきた吉沢さん。彼を支えてきた大切な人の存在、そして手にした気づきとは──。

クールなのに熱量を持つ仕事人は、誰よりも周りを大事にする人でした。

吉沢亮

シャツ¥46200/UJOH その他/スタイリスト私物

吉沢 亮

よしざわ・りょう●1994年2月1日生まれ、東京都出身。2010年に俳優デビュー。主な出演作は、大河ドラマ『青天を衝け』(NHK)、ドラマ『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ)、映画『リバーズ・エッジ』、『キングダム』シリーズ、『東京リベンジャーズ』シリーズ、『ファミリア』など

共演者・山﨑賢人は特別で、刺激的な存在

椅子に座る吉沢亮

今回公開した映画『キングダム』シリーズはもちろん、20歳の時から僕の転機になる作品で一緒になることが多い賢人は特別な存在。たくさんの刺激をもらっていて、どんな仕事をしているかいつも気になるんです。ただ「あいつに負けたくない」というより、同世代の俳優でいちばん大きいものを背負っている男だと思っているので「支えてやんなきゃ」みたいな意識が強いかも。

今作では別々の撮影が多かったけど、たまに一緒になると賢人の体に貼ってあるテーピングの数が大変なことになっていて。すごいことやってんだなって思ったし、戦っている彼をファン目線で応援していました。映画の完成後、僕が演じる嬴政のシーンを観た賢人はめちゃくちゃ泣いたらしく。「泣きすぎてはいていたジーパンがぬれた」って連絡がきました(笑)。

今作で演じた「紫夏編」は、嬴政の恩人・紫夏との過去が描かれる重要な場面。原作では子供の設定ですが、どうしても自分で演じたくて監督に直談判しました。シリーズで初めて“愛”を描いているし、1作目の撮影中から紫夏のことを考えて嬴政を演じていたので、今回自分で演じきれてうれしかったです。

吉沢亮の横顔

目指すべき理想を気づかせてくれた人

斜め上を向く吉沢亮

嬴政にとっての紫夏のように、僕にとっての恩人といえば映画『さらば あぶない刑事』でご一緒した柴田恭兵さん。常にピシッとした隙のない佇まいがカッコいいし、寡黙でとにかく素敵なんです。

共演させていただいた当時僕はまだ21歳だったので、長く続いてきたシリーズへ参加することに、ものすごく緊張していたのを今でも鮮明に覚えています。柴田さんが犯人に向かって銃を撃つシーンがあったのですが、その場面のリハーサルで突然、スタッフの誰にも予告せずに「バンッ!」と本当に音を鳴らされたことがあって。その瞬間、現場が一気に緊張してピリッと締まったんです。それは、撮影も中盤に差しかかり、空気がゆるんできていたことに対する柴田さんなりの現場のまとめ方だったのだと思います。言葉で何かを伝えるのではなく、行動や背中で示す姿に「カッコよすぎる!」と思いました。

もちろん、みんなとコミュニケーションを密に取って現場をよくしていくタイプの人もいるし、それはそれですごいこと。でも僕はそれが苦手なタイプなので、「そうか、行動で見せていけばいいんだ」と思えたし、「お芝居でみんなを引っぱっていく柴田さんみたいな人を目指したい」と、その時にハッキリと思いました。

難しい仕事も「やればやれる」

ブルーのシャツを着た吉沢亮

10代や20代前半の頃は、与えられた仕事に対して「オレはもっとやれるんですけど!」みたいに、すごく貪欲だった気がします。最近はその逆で、「本当にできるかな」と思うような、実力以上のものを求められている感じ。

もちろん絶対に無理だとわかっているものはやらないし、実際に挑戦してみて実力が足りなかったと反省することも、悔しい思いをすることもたくさんあります。でもそもそも挑戦しなきゃ何も始まらないし、「やるしかない」みたいなマインドで飛び込んでみる。そんなことの繰り返しです。

そうやって一歩を踏み出せているのは、若い頃にいろんなアプローチを試してきたからだと思います。事前に役をガチガチにつくっていく時期もあったし、何か変わったことをしてやろうと思っていた時期もある。そういう経験から吸収したことが、いい感じに自分の力になっている気がします。

今は自分がどうしたいかよりも、共演者の熱量や監督の求めていることを受け取るフェーズ。今のところ、それが僕の正解かなと思っています。もちろん、変わっていく可能性は全然ありますけどね。

吉沢亮の手

プライベートな時間をつくったほうが、仕事は楽しめる

あごに手をあてる吉沢亮

今年掲げたプライベートのテーマは、なるべく外で想い出をつくること。普段は家でずっとゲームをしていますけど、今年はなるべく友達と会ったり、ライブに行ったりしています。春には那須川天心選手のプロボクシングデビュー戦を観にいきました。今まで経験してこなかったことができているし、仕事とプライベートのバランスがいい感じにとれてきた気がします。

大河ドラマで共演した高良健吾くんの影響で、時計も趣味になりました。「記念に一個いい時計を買いなよ」とおすすめされていろいろ調べていたらハマっちゃって。シンプルに見た目がカッコいいんですよね。値段が値段なのでポンポン買えないけど、作品が終わった時のご褒美など、今のところコレクションは3本くらい。ヴィンテージの時計が好きで、「これは◯◯時代にどういうふうに作られたやつで……」と時計屋さんに説明されると、テンションが上がってきちゃう(笑)。高良くんとは時計の話ばっかりしています。

仕事しかしていなかった頃は、忙しさでどんどん心がなくなっていくような気がしていたけど、プライベートを充実させるようになってからは、仕事もより楽しめるようになりました。おかげで性格も、ほんのちょっとだけ明るくなった気がします(笑)。

Information

映画『キングダム 運命の炎』

中国春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍になる夢を抱く信(山﨑賢人)と、若き秦の国王・嬴政(吉沢亮)を描く人気コミックの実写化第3弾。嬴政が中華統一を目指すきっかけとなった恩人・紫夏(杏)との過去が明かされる「紫夏編」と、特殊任務を言い渡された信の「馬陽の戦い」が描かれる。●全国公開中

撮影/Sakai De Jun ヘア&メイク/木内真奈美(Otie) スタイリスト/九(Yolken) 取材・原文/松山 梢 ※MORE2023年9・10月合併号掲載